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拡散接合とは

1. 拡散接合の概要

 新素材ブームが華々しい時期(1985〜2000年),拡散接合研究は学会で非常に多くありましたが,最近は減少傾向にあります。拡散接合の研究的因子が明らかになり、実用段階に入り、最近では「新しい熱交換機を拡散接合で組み立て接合」とか,新聞紙上で拡散接合の用語を目にすることも多くあります。
 拡散接合は,材料を溶融しないで接合する方法ですが,固相接合方法で,インターネットで検索してヒットする件数から見ますと,超音波接合に続いて,鍛接,拡散接合は非常に注目されているプロセスであることが分かります.(Googleで,2007年10月検索結果,超音波接合:29000件,鍛接:2120件,拡散接合:1920件,摩擦圧接:1300件,攪拌接合:415件,常温圧接:13件)
 拡散接合は,JISで次のように定義されています.「母材を密着させ,母材の融点以下の温度条件で,塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して,接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法.」

拡散接合とは
                              

2. 歴史に見る接合

 エジプトのツタンカーメン王の黄金のマスクをご存知の方も多いと思います.あのツタンカーメンの黄金のマスクは,紀元前1300年頃,金部材を熱圧着して組み立てられています.
 日本では,400年ごろには同鐸の補修.また,奈良の大仏(747年)を組み立てる際には,ブロック単位で鋳造して,それを接合しています.この頃,百済から渡来した刀鍛治達によって刀作りが始まり,900年ごろには日本刀の製造技術を確立したとされています.
 種子島に銃が伝来(1543年)して,すぐ国内で銃の製造ができるほど,材料の加工技術が進んでいました.これらの接合・加工技術は,木炭を燃焼させて,還元雰囲気中で加熱して,金合金や鉄合金を鍛接,あるいはろう付けしています.
 19世紀以後,材料を加熱するエネルギーとして,木炭に替わり電気が利用されるようになりました.アークの他に,電子ビーム,レーザーなど新しい熱源が開発され,溶接箇所を効率的に最適に制御して溶融する方法が多く開発・実用化されてきました.
 拡散接合という用語は,1957年頃原子炉材料の組み立て接合時に使用されました.比較的新しい用語ですが,日本古来の「鍛接」,「木目金」と類似な接合技術です.木目金の接合は、「熱膨張係数の差を利用した加圧接合ジグ」で加圧して、「木炭の還元雰囲気中で加熱」して、現代の最新接合設備を使用しての接合部と同等の接合が得られます。

ツタンカーメン 木目金

ツタンカーメン

木目金

                           

3. 高付加製品の組立接合

 どんな商品でも,単一材料で作られている商品はありません.どんなに優れた材料でも,切断,切削,研磨,接続,接合等の加工法で,商品を組み立てる必要があります.「加工できない材料は,使える材料ではない」と言っても過言ではありません.
 いろんな材料を組み合わせた工業製品名,価格,規格,質量,そして価格を質量で割った値(円/kg)で整理してみましょう.自動車は1kgあたりの価格で比較しますと,トヨタの大衆車では約1,000円,レクサス高級車でも約6,000円です.高級車のイメージの高いベンツの車でも2,000~6,000円です. 
 鉄(50円/kg),アルミニウム(180円/kg),銅(220円/kg)の地金を加工して,パイプ,各種の板,角材などの素形材に加工しますと,いずれも地金の3~4倍の価格になります.自動車は主要構成材料の鉄(50円/kg),アルミニウム(180/kg)を大量に使って,作られています.
このような指標(価格/質量)で整理してみますと,冷蔵庫,洗濯機,テレビは約5,000円.最新の液晶カラーテレビ,ノート型パソコン,ビデオカメラ,携帯電話の順で高額になります.
 最近の軽薄短小製品の中には,ICなどが高密度に内蔵され,付加価値が高く,高額となっています.近年,メモリーの価格が低下していますが,デジタルカメラに使用するコンパクトフラッシュメモリーは,百万円/kg以上にもなります.
 ロケット,ジャンボなどの航空機,メガネ、などの装飾品となってきますと,さらに高額となります.こんな指標で見ますと,医薬品,生体材料,軍事用品は天文学的な数値となります.
 大量生産商品では,付加価値の高い軽薄短小商品.そして,安全性が要求される航空機器,デザイン性の高い装飾品,生命に関わる医薬品,生体材料と高くなっています.

比較表

商品価格
                            

4. 高機能接合プロセス

 接合・溶接具術の観点から見ましょう.造船,橋梁の鉄鋼材料を溶融接合して組み立てます.
一方,コンピュータのIC部品も元はシリコンです.これを高純度化,単結晶化,スライス切断してウエハー化,そして酸化,蒸着,エッチングなどの微細加工技術で無数のダイオードやトランジスターをシリコン基盤上に作製します.さらに,これを無数の金線で接続して集積回路ICとなります.これらICを微小なはんだ付けで積層基盤上に組立して,各種製品となっています.
 造船や橋梁作製時ですと,短い鉄鋼材料を長くする溶接・接合技術でした.現在は,「単に接続する溶接・接合技術」から,「材料的に溶接・接合が困難な材料の接合」,「接合による形状変化が少ない接合」,「より微細な接合」と従来にもまして,溶接・接合に求められる要求が多岐にわたり,部品価格(円/価格)の高い商品の開発・製造に貢献しています.
 技術進歩の速い現在において,さらなる各種の部品の高機能化に向けて,また部品価格(円/価格)の低下が求められています.各種の加工技術,溶接・接合のプロセスにおいても,されに性能改善,新しい部品の組立技術が要望されており,部品価格(円/価格)が従来にもまして,安くすることが求められています.
 このように,高性能部品と,それらを組み合わせたシステムの製造が,今後ますます日本に求められています.

高機能化

                                

5 拡散現象に依存

 排気ガスが大気中を拡散する.コーヒーにミルクを加えると,時間とともに一様になります.
金属材料同士も,接触させて加熱しますと,金属同士が混ざり合います.金属学では,金属中の原子の動きやすさを「拡散係数」として定義しています.この値が大きいほど,金属中を原子が動きやすくなります.
 図には,各種材料の拡散係数と温度との関係を示しています.原子の動きやすさは,結晶構造によってやや異なりますが,温度が高くなるほど,拡散が容易となります.
 接合する材料を加熱・加圧して接合する際,接合面間での接合面積の増加過程,接合面間での接合面の酸化皮膜の挙動,空隙の内に閉じこめられたガスの挙動などといった拡散接合過程は,すべて拡散現象によって律速されます.
 これが,本プロセスが拡散接合と呼ばれる由縁です.

拡散係数

 拡散係数と加熱温度(K)との関係。なお、TMは材料の融点(K)

 

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