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1. 陽極接合の現状と問題点

 ガラスと導体材料(金属や半導体材料など)を接触させて、200〜500℃に加熱しながら、ガラス側を陽極、導体材料を陰極として、200〜1000Vの電圧の印加によって接合する方法です。陽極接合は、接合温度が低いことか固相接合で寸法の変化が少なく、大気中でできることから、MEMSの組立・接合技術として広く利用されています。  
 信頼性の高い陽極接合部を得るためには、陽極接合部の機械的特性などに及ぼす接合条件の影響、ガラス材料の影響、加熱温度、それに接合後の逆向きの電圧印加や水など環境から受ける影響の検討も重要です。
 シリコンとガラスの陽極接合における施工条件の選定指針を得ることを目的として、陽極接合時に接合部で移動する電荷の移動に着目して、実験結果を整理してきました。接合実験では、接合条件(接合温度,接合電圧,接合時間など)の影響、ガラス材料(TEMPAX、PYREX、SW-YY、SD2)の影響、環境(加熱,逆向きの電圧の印加,水など)の影響を接合部の特性(引張強さ,破断形態,反応層の形成,電荷密度,電流密度など)から評価してきました。
 その結果、下記にことが明らかとなってきました。

接合方法

2. 陽極接合部の特性に及ぼす接合条件の影響
 

 陽極接合部の引張強さは接合条件によって変化します。電荷密度が低い接合条件では,引張強さはばらつきが大きく界面破断しますが,電荷密度が大きくなるにつれて,ばらつきが小さくなりガラス内破断となります。接合部にはNaやKが拡散し,減少した反応層が確認され,電荷密度の増加とともにその反応層は厚くなります。また,反応層が厚くなると引張強さが大きくなります。
 下記の図は、TEMPAXを用いた結果で、電荷密度0.4kC/m2でガラス内破断となります。

強さ

3. 陽極接合部の特性に及ぼすガラス材料の影響

 TEMPAX、PYREX、SW-YY、SD2を用いて、ガラス材料の影響を検討した。その結果、ガラス材料によらず,引張強さや破断形態は電荷密度に大きく依存することがわかりました。PYREX、SD2はTEMPAXとほぼ同じ接合部が得られます。SW-YYはTEMPAX、PYREX SD2に比べて,同じ接合電圧ではより低温での接合が可能となります。同接合条件下では、SW-YYは接合電流が大きく、接合部に形成される反応層も大きい。
 下図は、接合強さと接合時の電荷密度との関係を示している。材料に関係なく、電荷密度0.4kC/m2でガラス内破断となり、接合部の機械的特性は接合中の電荷密度に依存します。電流が流れやすい材料は低い温度で接合できますが、接合にはある一定の電荷密度が必要なようです。

材料の影響

 

4. 陽極接合部の特性に及ぼす環境の影響

 逆向きの電圧の印加した接合部を水に浸漬すると,逆向きの電圧を印加時に発生した電荷密度の増加とともに引張強さは低下します。逆向きの電圧の印加のみ,水への浸漬のみだけでは接合部は劣化しません。また、接合部への加熱の影響はみられません。
 下図は、陽極接合部への、逆電圧、水浸漬、加熱処理の影響を示しています。

環境の影響

 このように、陽極接合部の接合部の反応相の量、接合部の機械的性質などは、接合条件、ガラスの種類にかかわらず、陽極接合部に流れる接合時の電荷量から評価できそうです。この結果は、陽極接合部の品質安定化のため、接合時の電荷量の測定が有効であることを示していそうです。

 

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