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金属技術史

3.10 接合による材料の変質は?

 金属材料を加熱すると、1)結晶粒の粗大化と軟化、2)材料の蒸発、3)雰囲気ガスとの反応等について考える必要があります。

1.結晶粒の粗大化と軟化
 接合する際再結晶温度以上に材料を加熱しますから、結晶粒が大きく成長します。変態現象を利用して結晶を微細化できる鉄鋼材料以外では、接合プロセスで「結晶粒の粗大化」と「加工歪みの解放による材料の軟化」を伴います。拡散接合プロセスでは、原子の拡散現象を利用しますから、拡散に伴う「結晶粒の粗大化」、「軟化」を避けることはできません。

2.材料の蒸発
 真空中で材料を加熱しますと、蒸気圧の高い金属は蒸発します。例えば、黄銅(Cu-30%Zn)を真空中で加熱しますと、亜鉛が蒸発して多孔質の銅になります。また、Al-Mg合金で数%Mgが含まれている材料では、真空中での加熱でMgが蒸発し、接合容器内に蒸発したMgが付着し、また真空ゲージも劣化させます。 
 ステンレス鋼には、Crが含まれます。大気中での保管で表面にはクロム酸化物が形成されています。このクロム酸化物は蒸発し易いことから、ステンレス鋼の接合では接合容器内が汚れます。また、加熱ヒータとして、ニクロム線(Ni-20Cr)を使用しますと、ヒータ表面に形成されたクロム酸化物が蒸発し、ヒータ線が細くなって断線し易く、真空中でのヒータ線としては使用できません。

3.雰囲気ガスの反応
 接合材料と反応生成物を形成するガスは使用できません。
水素ガス中で、水素化物を形成するTi、Taなどは接合できません。チタンを水素中で加熱しますと、チタン材料は膨張します。水素中で加熱する場合は水素化物形成の有無を確認する必要があります。
 アルゴン中での加熱では、アルゴン中の不純物ガスによる汚染が問題となります。1気圧のアルゴン中での不純物量より、油回転ポンプでの真空の方が不純物ガスの量が少なくなります。 
 不純物ガスとして酸素が問題です。酸素中では、金は酸化物を形成しません。銀の酸化物は200℃以上で分解します。銀製品を大気中でガス加熱しますと、軟らかくなりますが、非常に表面がきれいになります。金属は元素によって酸素との親和力が異なります。この親和力を表した図をエリンガム図と呼び、金属の酸化・還元反応を考える際に使用します。この図で、下のある元素ほど酸素との親和力が大きく、還元するには雰囲気圧をさげ、酸素分圧を下げる必要があります。Cu, Fe, Cr, Mn, Si, Ti, Al, Mgの順に親和力が大きくなり、その酸化物の還元が困難になります。
 鉄鋼材料では、その表面に酸化物が形成されます。鉄の酸化物には3種類あり、親和力の低い酸化物が最表面に形成されます。この鉄鋼材料にAl が添加されますと、最表面にアルミナが形成されるようになります。親和力の大きい元素が添加されている材料では、その酸化物が形成され、接合を阻害することになります。

oxide

各Al含有Fe-Al合金を大気中で加熱した際の酸化皮膜
(椙山正孝、金属材料の加熱と酸化、誠文堂)

 

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