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1.8 最近の拡散接合の動向 

1. 研究動向
 溶接学会誌の展望記事から、溶接・接合方法の発表件数の推移を見てみよう。融接法の「サブマージアーク溶接」の発表件数は、1975年当初30件程度みられたが、1990年には減少してなくなった。薄板の溶接に使用される「ティグ溶接」は、発表年に関係なく毎年30〜50件で一定の発表件数で推移している。電子ビーム溶接研究は、1990年代活発であったが、引き続きレーザー溶接研究に変わった。
 1980年代の新素材ブームで、これら新素材の接合法として拡散接合が注目され、拡散接合研究は150件/年あった。新素材ブームが終わり2000年代に入り拡散接合の研究は大幅に減少し、最近は30件/年である。現在、固相状態で接合する方法として、摩擦撹拌接合法の研究が非常に活発である。

2.2012年の研究概要
 2012年の拡散接合の研究発表の内容を分類すると、◎接合の歴史、◎材料特性の解析と材質の改善、◎接合因子の影響,◎表面処理法(表面エネルギ低下、共晶、金属塩生成法)、◎各種金属の接合(同種、異種)、◎実用化研究等を目的としている。
 ◎接合の歴史では、藤の木古墳から出土した勾玉は金アマルガムを接合部に充填後、水銀を蒸発させて接合しており、液相拡散接合(TLP法)の原点が既に奈良時代に確立されていたとの「古代の巧みの技」の紹介があった。
 ◎材料特性の解析では、銅の双結晶対を拡散接合で作製し、接合面での対応方位関係と粒界腐食感受性との関係が検討された。SUS304を切削する際、超硬に被覆する(Ti,Al)Nの組成を検討するため、SUS304と (Ti,Al)N を拡散接合して検討し、Al濃度の増加に従って拡散相が薄くなり、被覆組成として有効である事が示された。Mgの材質改善の観点から、圧延接合法によりAl/Mg/Al合金クラッド板が製作され、機械的特性向上に及ぼすAl板の影響が検討された。発泡金属作製に際して、Al板間にTiH2とAl2O3 粒子を介在させた積層拡散接合法で、気孔発生の安定化につながる事が示された。
 ◎接合条件因子の観点から、SUS316ステンレス鋼箔を用いて、箔の加工度が接合を促進する事、拡散を促進するため、水素拡散させてβ領域へ変態させたチタン、ジルコニウムは低い温度で接合できる事が示された。
 ◎表面処理法では、表面エネルギの活用の観点から、接合面を凹凸化して超音波の付与で、従来法より低温で接合する技術が開発された。共晶反応を利用する方法では、Alの接合面間に亜鉛を適用することで、継手性能が向上することが示めされた。
 ◎金属塩を生成して、その分解温度が低い事を利用して、接合温度を低下させる事が可能となり、金属塩の種類、材料の組み合わせについて検討された。ギ酸処理よりCuとCuの接合、Al合金とSUSの接合でその効果が示された。クエン酸処理でも、Cu/Cuで接合の低温度化につながった。また、NaOH水溶液処理でも、Al/Cuの接合の低温度化に効果が認められ、AlをNaOHで、Cuをギ酸で表面処理したAlとCuの固相接合でも効果が認められた。
 ◎各種金属の接合(同種、異種)では、タフピッチ銅同士の拡散接合で、表面粗さと接触タイミングの影響について、無酸素銅と比較して検討された。クロム銅同士の拡散接合で、加圧力、接合面粗さ等の接合条件因子の影響について検討され、その選定指針が示された。
超硬合金も接合面の平滑化とインサート金属の選定で、実用化に耐える接合部の作製が可能である事が示された。異種金属の接合では、無酸素銅とオーステナイト系ステンレス鋼における低変形拡散接合、Ti-Al-Nb合金と炭素鋼の接合と界面分離、鋼/Mg-Ag-Al溶液界面におけるFe-Al金属間化合物形成に及ぼすMnの影響等の報告があった。
 ◎実用化研究では、核融合炉のブランケット材としてのWと低放射化ODSフェライト鋼の固相拡散接合で、また国際熱核融合炉のラジアルプレートを熱間等方加圧法26)で製作し、拡散接合による組立の可能性を示した。拡散接合の委託企業から、「ホットプレスとHIPによる拡散接合」の現状と問題点等についての報告27)があった。
 また、実用化に際して、接合部の非破壊評価が重要である。接合部に超音波探傷を適用し、評価の可能性が示された。

3. 拡散接合の実用化動向
 拡散接合の適用例については、界面接合研究委員会が調査した結果があり、これらの成果は、AWSのWELDING HANDBOOKにも記載されている。この当時はフォトエッチングした金属箔を積層して、内部に複雑の通路を持つ中空素子の適用例はみられなかった。現在、金属箔を積層した中空部品の製作例が多い事が特徴である。
 現在、多くの企業は拡散接合の実用例を明らかにしないが、「拡散接合」で検索するとホームページがヒットする。
 固相接合法の仲間の、「拡散接合」、「摩擦撹拌接合」、「摩擦圧接」、「鍛接」、「爆発圧接」を、インターネットでの検索ヒット数を2010年と2013年を比較してみる。2010年に50%であった拡散接合が、3年経過した2013年には、拡散接合の占める割合が約80%に増加した。研究面では、摩擦撹拌接合が活発であるが、拡散接合のホームページ数の割合が増加している。
 また、拡散接合の中で注目されているキーワードとしては、拡散接合の施工に関係する、「装置」、「温度」、「金属」への関心が高い。

3.拡散接合プロセスに関する注目される研究。
 拡散接合プロセスで、接合温度の低温度化が望まれている。
 接合温度を低温度化するため、◎接合面の清浄化、◎拡散の促進の観点から検討が進められてきた。

 ◎接合面の清浄化の観点からは、

   ○加熱による清浄化

   ○活性金属による還元(Al-Mg合金中のMgがAl2O3を還元)、

   ○イオン衝撃(酸化皮膜をスパッタリングで除去)

   ○金属塩の生成

 ◎接合面の密着化の観点からは、
   ○変態超塑性
   ○インサート金属の適用
   ○BCC領域での接合
   ○微結晶薄膜接合
 

最近は、「金属塩の生成」と「微結晶薄膜接合」に着目した研究が活発である。

 

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