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大和ミュージアムを見学 (2019年2月19日)

 広島県呉市にある「大和ミュージアム」を見学した。戦艦「大和」の造船技術の情報収集、戦艦「金剛」に搭載されていた「ボイラー」の見学が目的でもあった。
 日露戦争の日本海戦で使用された軍艦、例えば戦艦「三笠」はイギリスのビッカース社からの輸入戦艦である。日露戦争直後、富国強兵のため、軍艦の製造技術を欧米から導入する必要があった。
 当時、造船技術が最も進んでいた国はイギリスである。日本海軍は、技術導入も兼ねてイギリスに巡洋艦「金剛」を発注し、また同時に軍艦の製造技術、製鋼技術を学ぶため、多くの技術者を渡英させた。戦艦「金剛」の購入と造船技術導入を進め、これ以降日本海軍は多くの軍艦を造船して、のちの戦艦「大和」等の軍艦の造船へと発展した。戦後は、これらの技術が受け継がれ、日本の造船技術にも活かされました。
 電気溶接は呉工廠が先行的に開発した技術で、従来の鋲打ちに比べ、作業の効率化・船の軽量化・材料費節約された。呉工廠では、昭和6(1931)年,初めて電気溶接を採用した軍用船を製作しており、試行錯誤を重ねて、戦艦「大和」にも採用された。
 戦艦「大和」は呉で、戦艦「武蔵」は三菱重工業・長崎造船所で、同時期の建造である。三菱重工・長崎造船所資料館に戦艦「武蔵」の建造時のリベット鋲締め機が展示してある。展示品を比較すると、戦艦「武蔵」は、リベット鋲締め機を3人で保持。戦艦「大和」は二人で保持との説明がある。戦艦「大和」は、リベット構造から溶接構造へと造船技術が進歩しており、戦艦「武蔵」より技術的には先進的である。

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 当時のアーク溶接風景(左)と戦艦「大和」のリベット鋲締め機(右)


 「大和ミュージアム」には、軍艦「金剛」に搭載されていたボイラーの展示がある。戦艦「金剛」は、日本が技術導入のため外国へ発注した最後の主力艦で、イギリスのビッカース社で、大正2(1913)年に竣工している。「金剛」には、重油と石炭混焼の「ヤーロー式ボイラー」が搭載されていた。「ヤーロー式ボイラー」は、イギリスのヤーロー社が開発した、20世紀初頭の世界の代表的な戦艦用ボイラーである。
 本艦のボイラーは、昭和初頭に改装のため、戦艦「金剛」から撤去され、当時の海軍技術研究所に移設された。戦後は科学技術庁金属材料技術研究所の建物の暖房用ゴイラーとして、平成5(1993)年まで使用されていた。
 筆者は、昭和41年から、この金属材料技術研究所に勤務しており、重油を燃料とする戦艦「金剛」のボイラーのスチーム暖房のお世話になったことから、この見学は、非常に感慨深いものがありました。

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大和ミュージアムに展示品ボイラー(左)と移設前の金属材料技術研究所での運転風景(右)

追伸

最近、戦艦「大和」建造における溶接適用の状況を示した文献が見つかっている。
記のように解説されている。

 「大和ミュージアムの学芸員齋藤義朗さんによれば、大和建造にあたってどこまで電気溶接を採用するのか、使用方針と実際の溶接工法を詳細に明示しているし、大和の船体全部を示す非常に珍しい船体図面もあって、「電気溶接の使用で船体重量を抑えようとしたものの、船底部など強度が必要なところはすべて鋲接合であったことがよくわかり、いずれも鋲から電気溶接への過渡期の技術状況を示す貴重な資料だ」と述べている。

 

 

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