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SPring-8を使った文化財研究の最前線「先進の光で文化財が語りだす」と題して、2017年3月4日、浜離宮朝日ホールで「SPring-8の研究成果講演会」が開催されました。「文化財」と「SPring-8利用による非破壊評価」の興味から出かけました。講演は、下記の3件です。 1. 非破壊高エネルギー放射光蛍光X線分析による古代ガラスの起源推定(東京理科大学:阿部義也)・・・ウランまでの重量元素をppmオーダーで定性・定量分析が可能なことから、ガラスの原料、産地等の考察ができる。その結果、「同一の工房での制作」か、それとも「狭域の工房の制作」か、さらに考古学的な年代推定等ができる事などが報告された。 2. イランにおける鉄製利器出現の謎を追う(岡山市立オリエント美術館:四角隆二)・・・青銅器時代から鉄器時代への移り変わりの時代、紀元前13世紀頃、現在のイランで鉄刃青銅柄剣が出土している。多くの鉄剣をCT画像解析した結果、鉄剣(鍛造品)の周りに、青銅を流し込んで鋳造した鋳ぐるみ法で制作され、その構造と制作技法等について報告された。 鉄の周辺に青銅を流し込む際には、鉄と青銅を接合するため、鉄を予熱する必要があります。現在では鉄が酸化しないように、ニッケルメッキ後施行されている。CT画像では、鉄剣と銅の接合界面のほとんどで、隙間が観察された。しかし、局部的にその界面が質量数の大きな物質で満たされた箇所もあり、古代の鋳ぐるみ法に興味がそそられた。
鉄刃青銅柄剣の外観写真とCT画像 3. 放射光で江戸・明治の匠の制作技術を探る(東京芸術大学:田中眞奈子)・・・自在置物、日本刀、火縄銃等について、CT 画像解析から制作技法を探る報告がありました。
自在海老置物の高エネルギーX線CT画像を再構成した全体像 CT 画像解析から、「関節の箇所を可動構造とするため、数ミリ程度のリベット構造」や、「足が本体から脱落しないように、内側で銀ろう付けがされる」など、自在置物の構造とその制作法が明らかにされました。
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