第8回接着・接合EXPO を見学
接合技術は、自動車・エレクトロニクス分野で欠かせない技術となっています。本展は、最先端の異種材料接合技術から一般用途まで、幅広い接着・接合の技術を取り扱う専門展の一つです。最終日、朝10時から午後3時頃までの、拡散接合関連技術の見学でした。どのブースも多くの見学者で溢れていました。
各企業とも、新しい技術開発を行なっています。既存技術の高度化、既存の技術と接合技術の組み合わせてハイブリット化しての技術展開となっていました。私見ですが、各企業の今回の展示のポイントを解説します。
写真1 第8回接着・接合EXPO 幕張メッセ
1. 拡散接合のハイブリッド化
1.1 東北特殊鋼(拡散接合&切削加工)
拡散接合技術を駆使して、微細構造を有する各種製品の展示のほか、異種金属の接合例もありました。今回の新しい技術展示は、「拡散接合&切削加工」です。両者の組み合わせで、①内部構造が強みで、複雑かつ高精度な流路構造が可能となる。切削や3Dプリンタでは実現できない構造が可能となります。また、②コストメリット(切削加工の組み合わせで、従来加工法よりもコストダウン)があります。
写真2 拡散接合&切削加工(東北特殊鋼)
2. ヤマテック(拡散接合の進化)
アルミニウム合金の拡散接合では、合金中のMgと接合面の酸化皮膜との反応で、接合部が形成されます。このMg量には最適量があります。6061合金(Mg量:1.0%)や6063合金(Mg量:0.7%)は接合できますが、2.5%Mgを含有する5052合金の拡散接合部の接合強さを、母材並にすることは困難とされてきました。独自技術で、接合部の改善を図り、複雑形状部品の接合を達成しています。また、各種アルミ合金板と銅板の剪断試験の展示も興味深いものでした。
写真3 吸着板と冷却板の拡散接合体(直径約20cm)
2. 切削・組み付け技術と接合のハイブリッド化
2.1 福寿工業(ハイブリット液相拡散接合技術)
複雑な形状部品ですと、一体モノでの熱間鍛造や機械加工が困難です。そこで、「ハイブリット液相拡散接合技術」を開発して、SS材やSCM材の部材の組み立て接合品を展示していました。SS接合材の接合面間にロウ箔を挟んで、加圧下で通電加熱してロウ材を溶かして仮付け接合(1次接合)。引き続き、真空炉で無荷重下で加熱して、ロウ材の母材への拡散処理を行い、接合面でのロウ材が消失します(2次接合)。
2.2 トップ精工(超平滑化でセラミックス、Moの接合)
セラミックスなどを精密加工する技術を持っており、精密加工技術と拡散接合を組み合わせています。2年前の展示会で、初めて拡散接合品の展示がありました。前回の展示品のNiのほか、今回はAlN、SiCなどのセラミックス、高融点金属のMo製品など、高融点材料の接合が特徴と言えるでしょう。接合するための装置も調達していました。拡散接合装置の仕様は、最高加熱温度:2000℃、最大有効寸法:φ600xH200、炉内雰囲気:高真空・窒素・アルゴンでした。
写真6 高融点材料の大型中空部品の組み立て拡散接合
3. 拡散接合装置販売企業
3.1 富士電波工業(拡散接合装置の開発と受託実験)
拡散接合装置を市販する装置メーカーが多くあります。富士電波工業は拡散接合用装置を開発し、企業からの受託実験を開始しています。また、社内で、各種材料の拡散接合を施工して、ステンレス鋼、銅、アルミ合金の接合体及びそのカットモデルの展示もありました。
写真7 受託拡散接合用装置
4. その他
4.1 京セラ(焼結と接合の複合化)
セラミックス製の中空複雑形状部品の製作法として、焼結セラミックスの圧粉体を積層して、圧粉体の焼結時に、積層界面の焼結も進行させる方法の紹介がありました。焼成と接合を同時に行う方法です。現在は、材質はアルミナで、サイズは最大φ500、高さ10mm 以上が可能です。
写真8 製造プロセス
写真9 アルミナ中空流路体(カットモデル)直径約20cm